愛媛の農業の魅力とこれからの可能性を探る
愛媛県は、全国でも有数の柑橘類の産地として知られていますが、近年はその農業にさまざまな変化の波が訪れています。高齢化、気候の変動、流通コストの上昇といった課題の中で、愛媛の農家がどう向き合い、どう前進しているのか。業界アナリストの視点から、今の愛媛農業の魅力と未来のヒントをお届けします。
地形と気候が生む愛媛農業の多様性
愛媛の農業を語るうえで欠かせないのが、温暖で雨の少ない気候と、海や山に囲まれた多様な地形です。この自然条件が、柑橘だけでなく米や野菜、メロンなど多種多様な作物を育てることを可能にしています。それぞれの地域で主力となる作物は異なり、地元の風土を活かした農業が根付いています。こうした多様性が、愛媛農業のレジリエンス（回復力）の強さを支えています。栽培の工夫や品種改良も盛んで、品質・味・出荷時期において他県との差別化が図られています。年間を通して収穫が見込める構造が、農家の安定経営にも寄与しています。
テクノロジーで支える新しい農業のかたち
愛媛でも、ドローンによる防除やセンサーによる土壌モニタリングなど、デジタル技術の導入が進んでいます。高齢化や人手不足に対応するための手段として、また病害虫の早期発見や収穫の安定化にもつながる取り組みです。導入のハードルを下げるため、自治体や農協が支援制度や研修の機会を設けており、関心を持つ農家が徐々に増えています。技術が苦手でも“仲間と一緒に始めてみる”ことが普及の鍵になっています。近年ではクラウド上で栽培状況を記録・共有するツールも普及し、農作業の「見える化」によって家族経営でも効率化が進んでいます。こうしたデジタル支援は、若い担い手を引きつける要素にもなっているようです。
農地を資源とする新たな視点が未来を切り開く
これからの農業は、作物を作る場だけでなく、「環境に貢献しながら稼ぐ場」としての農地の活用が重要になります。例えば、水田の管理方法を工夫することで環境価値が評価され、収益化につながる制度も登場しています。地球温暖化対策への貢献と農家の収益向上が両立する新しいモデルとして注目されています。愛媛でも実証が進められており、県全体での取り組みが広がりを見せています。今後は農業が「生産」だけでなく「社会貢献」の側面も担うようになり、地域全体の価値を高める役割を果たすと期待されています。環境や社会に対する配慮が、消費者からの評価や信頼につながる時代が来ているのです。